2020年10月例会開催報告
2020年10月21日(水)例会は、森真沙子先生からご著書『柳橋ものがたり』に登場する以下の7人を、『「柳橋」で遊んだ妖人奇人録』として解説ご発表いただきました。
- 柳橋のガイドブックを書いた、成島柳北
- 赤羽織の怪人、明治の文豪尾崎紅葉の父親・尾崎谷斎(こくさい)
- 同じ柳橋芸者を妻とした、澤村田之助と三遊亭圓朝
- 十四才にして柳橋に遊んだ河竹黙阿弥
- 江戸の粋に溺れた酔いどれ大名・山内容堂
- 感染予防に尽力し、感染病で死んだ手塚良仙(手塚治虫の曽祖父)
- 柳橋芸者を身請けした山岡鉄舟
『柳橋ものがたり』は、時代小説で活躍する森真沙子先生が、しっとりとした筆づかいで、主人公に柳橋の船宿・篠屋に住込む「綾」を登場させ、この地で生きる人びとと、上記の妖人奇人を絡ませ、思いがけないストーリー展開によって、読者を惹きつけるシリーズ版。今回で5冊目。
だが、『柳橋ものがたり』を片手に、現代の柳橋地区へ期待をもって訪ねても、今やマンションやビルが立ち並ぶ無機質な街に変質しており、江戸時代の情緒・雰囲気は殆ど味わえません。
ところが、森先生の筆にかかると、柳橋は情緒纏綿とした街へと見事に変貌します。森先生が変身させるヒントは何か。
それは「今の東京の土地には昔が遺っていない」のだから「その地の地霊の囁きに耳を傾けるしかない」と指摘されました。
「地霊」とは、『東京の地霊』(鈴木博之著 ちくま学芸文庫)によると、ラテン語の「ゲニウス・ロキ Genius loci」の訳語であるという。
森先生の”地霊”観は、その土地に生きて死んだいにしえの人々の”気配、囁き”。その幽けし囁きに耳を傾けなければ何も分からない。
ですから森先生は、柳橋で「遊んだ妖人奇人」たちが、この地でさまざまな可能性を求め、その結果としての行動・振る舞いから起こす事件と背景を織り込むことで、今では目に映らない柳橋の魅力構造を、読者に伝える「担い手」をされているのではないでしょうか。
まだ読まれていない方は、このような視点から『柳橋ものがたり』を楽しまれたらと推奨いたします。
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