2016年7月例会開催結果
2016年7月例会開催結果
7月は若松謙二氏から「『北斎漫画』で江戸時代を読む」についてご発表いただきました。
若松氏は、前半、江戸時代について様々な観点から幅広い解説を展開され、後半で『北斎漫画』について、次のように考察を行われました。
1. 若松氏は『初摺 北斎漫画(全)』(小学館2005年)に出会い、その内容に驚嘆し、研究に入ろうとしたが、一点一点の画に解説が記されていないことに気づく。そこで、同好の仲間と「北斎雑談会」を結成し、以下の『北斎漫画事典・索引』をつくり、今も、その研究を続けている。
2. 葛飾北斎は宝暦10年(1760)下総国葛飾郡本所割下水(東京都墨田区)に生れ(『初摺 北斎漫画(全)』10頁)、嘉永2年(1849)浅草・遍照院境内内の仮宅にて90歳没。当時では驚異的長命で、生涯にわたって『北斎漫画』第十五編(3600余点)発刊。
3. 北斎が漫画を描き出した動機としては、①自身が絵手本作成の必要性を感じた。②多くの門人たちから懇望された。③あるいは、その両方ではないかと述べられた。
4. 北斎が題名に「漫画」とつけた意味を、浦上満氏(『北斎漫画』蒐集家)が『初摺 北斎漫画(全)』(918頁)の中で、次のように述べている。「現代でいうマンガとは違う。漫然といろんなものを描いた、という意味と考えていいと思う。北斎が習得したあらゆる画技・画法を駆使し、彼が描きたかったものを描き尽したデッサン帳とでもいいますか、彼のすべてがこの中に詰まっている」と。
5. 若松氏は、初編第二編に掲載された画は、すべて当時の日常生活に直結した画像であると述べられ、いくつかの画について解説されたが、その中から三画を紹介します。
●あぶら売り
油売りは、計量するのに時間がかかる。そこから、話をして時間を費やすことを「油を売る」と言った。古川柳に「油売り 油は売れず 油売る」
●畳屋
畳屋が畳表を張っている。現在と全く変わらない作業の様子が面白い。
●辻駕籠
辻駕籠が酔客を相手に営業の呼びかけをしている。こうした行為を「ばん」をかけるという。辻駕籠屋は俗に「もうろう」と呼ばれた。この情景が実に生き生きとしていて、いままさに動きだすような感じである。
若松氏の『北斎漫画』研究、今後のさらなるご研鑽を期待し、ご発表に感謝申し上げます。
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