「鉄舟、人生のこころの標を刻する77の印」
2014年4月例会 木下雄次郎氏発表
「鉄舟、人生のこころの標を刻する77の印」
山岡鉄舟居士印存、山本玄峰老子題字「神如誠至」の掛け軸(紙本水墨・ 緞子裂・ 象牙軸)、「昭和30年9月上浣(注・上旬) 全生庵主玄實識」をご持参賜り、掛け軸印に番号をつけられ、その漢字と意味を「鉄舟、人生のこころの標を刻する77種の印」として解読・解説いただきました。
鉄舟印存作成の山本玄峰とは
山本玄峰は慶応2年、和歌山県に生まれる。生後間もなく旅館の前に捨てられるを岡田夫妻に拾われ、岡田芳吉と名づけられる。
幼少期は、暴れん坊で咸応丸とよばれる。
十代前半より、筏流し等の肉体労働に従事し、17歳で結婚。その後、目を患い、家督を弟に譲り、四国88か所の巡礼に出る。
7回目の遍路の途中、雪蹊寺の門前に倒れ、助けられ寺男として働く。その勤勉ぶりから、入門を勧められ養子となり住職につく。
その後、龍沢寺、松陰寺、瑞雲寺など白隠ゆかりの古刹を再興。
1926年より欧米、インド等を訪問、帰国後、妙心寺管長を経て、龍沢寺住職に就く。
終戦の詔勅の耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍びの文言を進言。天皇国家象徴の定義を発案。鈴木貫太郎の相談役を務め、終戦を勧める。
玄峰印
A:般若蜜 般若は迷いを払い悟りを得る、蜜は奥深く知りがたい
B:玄峰
C:臨済宗
玄峰と鉄舟の共通するもの
鉄舟は江戸無血開城を行い、玄峰は太平洋戦争を終結に導く。
鉄舟は明治天皇に仕え、玄峰は昭和天皇に進言を果たす。
両者ともに禅に悟りを求め、禅寺復興に尽力。
印の意味するもの
印とは、兆および心覚えの意味で、陰陽の2気を刻します。
陽は明らか、陰は密かにを意味し、人知れずの心模様は印刻しています。
命運に対し開運を印として,心模様の軌跡を刻し、刻した瞬間の鉄舟心の奥まで覗けます。
ただ、人知れず心の奥深くに秘めたものは、安易に読めないよう自分だけの心の記憶として、片や旁を巧みに変化・作字しているため、辞書等にありませんので、解読に確証を得られません。77個の印は鉄舟印のすべてではありません。他にも多くの印が存在しています。
箱書きが全生庵玄實とあり、これだけ多くの印がそろうということは、全生庵に存在した印で作成したと推測できます。
同様のものが全生庵、金沢市の春風館文庫に存在し、京都で同時期に見たとのことから、何本か作成されたことが推察されます。
印から見える鉄舟成長の名称
ご存知のように生まれ以て親が命名したものは
小野鉄太郎高歩です
山岡鉄太郎:なし 鉄は強く正しい男
高歩:4,35,68
山岡高歩:24,53,55 高歩,世俗を離れ生きる
山岡高歩:45,50 岡に××はナナで芽生えるで、山は頂点、頂点を目指す高歩
山岡高歩:53 岡に口あり、口は関門で、一生懸命励めど関門あり高歩
山岡高歩:55 山を大きくで高い頂点、岡に××に目覚め、岡の構えは
遠く離れた行きづまり、歩は止まると止まると裏字止は静、
裏字で動は移り変わる世の治乱、高いは俗界を超す。
高い俗界を超す頂点に目覚め行き詰る治乱を静視する
高歩士印:59 高歩、知識・学問を以て道を志すを刻す
高歩号楽:58 高歩、号を楽となずける
一楽斎:34 楽しきを、一は始めん、斎は読み書きするで、
楽しき読み書きを始める
壱栗斎:63 栗は実で、読み書きが実り始める
壱祝三火才口:66 祝は神に仕える、三火は3つの煩悩(貧、シン、痴)、
口才は弁才、壱は専念する(意味不明)
山岡鉄泰郎:23,37 強く正しくおごらずのびのびと安らかに
号鉄士:40,54,7 号は別名を名づける:学問や知識で身を
立て強く正しくを志す
鉄口生:16 口生は虜、強く正しくなるために懸命である
号曰鉄舟:20(舟は裏字) 裏字は未だならず。舟は授かる。鉄舟と名付けるも未完
鉄舟:1,5,10,21,26,44,51,52,60,71 強く正しくを授かりました
鉄舟:60 失うを大きくかねは小さく、授かりは倒れ、金を失い授からず
鉄舟:73(裏字) 強く正しくを授からず
臣鉄舟:76 家臣、鉄舟
山岡高歩号鉄舟:31 私が山岡鉄舟高歩です
印号鉄舟:62 印の号を鉄舟となずける
鉄舟居士:32,33,36,48,64,65 鉄舟、仏門に入る
高歩士単:61 世俗を離れ、知識・学問を以て誠の道を尽す。単は誠を尽す
藤印高歩:8 印はめでたい、天皇から授かるの意味があります。
印を裏字にしていますので、めでたくもなしですが、
最大級レベルの印を作っていることから嬉しいのでしょう。
藤原高歩:3、8,22,41 天皇を守る藤原家。天皇より授かると推察
山岡高歩:(山に目作字)17 目は古来、官位4位を示します。従4位の官位綬領印。
以下は時代の中で心模様を刻した印
2:江上清星 水面には清らかに星が煌めき、山間には名月が輝く
山間名月
6:銀盤雪星 銀色の平原に星がきらめき雪が降る
9:帝右而帰 天皇のもとになんじ戻らん.秦の王と会合した趙王は
事なきに帰還した古事、完璧而帰を自分の出来事に
充てています。いつのことでしょうか?
12:全作字印 右上:同じに縦2本:同じは主体性の共同体。1本線を点に変えて上へ
主体性のない仲間より離れ
右中:己の線を下げている:己を下に置く
右下:甲乙は一番手、二番手、くの上向きは勝れる人
病たれは感覚。逆にしているので、感覚を逆にとる
点はわずかな動作を示すが、無いということは動作を外し
2本線は太刀をあわせる
左上:霞:ぼんやりとみる、調息八方目を意味し、
物を見て動くのではなく、気配で動け
左下:歩をばらして横組み、己才は生まれ持った才能、
以て穴、つまり穴に嵌る
*以上をまとめると、主体性のない仲間から離れ、己を下に置き
すぐれた1番2番手と太刀合わせ、感覚を逆にとり、わずかに動作を外せ
物を見て動くのではなく、気配で動け。生まれ持った才能に頼れば
すなわち穴に嵌る
*この解釈は確証がありません。
13:關廣野号鉄舟(舟裏字)荒野を掃き清める鉄舟、未だならず。
14:入木伝承五十世山岡高歩 免許皆伝印
15:九日閉界山入己雷出 ちょうは久しく。ただしここでは日の横棒がとってある。
閉は門を閉ざすべく、界は仲たがいをし決別する。、
山は万一の幸運を願い冒険的な行動に出る。
入りは関わり、己は終える。
雷の下の田田は者を連れるを意味する。
*つまり、長くもない関係に終わりを告げ門を閉ざす。
仲たがいし決別。幸運を願い、弟たちを連れ
雷のような大きな声を上げ、家を出る。
18:月木鈎明月禾亀(甲骨文字:一部)
月は歳月、木は育成の徳、
金に口:こうは隠れる事実を明るみに出す。
明は物事を見分ける知力。月はえぐりとられた。
禾秋は聞き存亡の時。*つまり歳月育成の徳、
隠れる事実を明るみにだし物事を見分ける知力
えぐりとられる危機存亡の時。
25:一昧瀬 一は始まる。昧は通りに暗い愚かな、瀬は出会い。
*道理に暗い愚かな出会いが始まった。
27:雪上相霜 雪のように高貴で清く、さらに霜のように清く研ぎ澄まされるを願う。
28:無刀流印
29:筆有神 精神、宗教観、自らの考えを筆に託す。
30:壺中天地改新印 禅語の壺中日月長を文字って理想郷へ世界を革新するという印。
38:屋成強(行人偏)強は40歳、行人偏は過ぎる、屋は家を示します。
しかも奥に屋根が2つある。
*40歳を過ぎて2階建ての家を建てるに至る。
39:浮生適意既渓(サンズイ編なし)楽 はかない命も思うにかないて終える、
いかんぞや楽し。辞世印です。
42:屏風一双き臨済宗法灯派本山越中州国泰寺五十四世越そう
禅師山岡鉄舟居士印
43:一刀正伝無刀流開祖
46:無儘(人偏なし)蔵 無中無尽蔵のこと。
何もないということは何でもできるということ。
49:端遂書高歩印 端は本源の正しさ、遂行のしんにゅうではなく禾、作字で
遂は成就、禾は収穫、しんにゅうがないということは未だ
道に至らず、書は筆と者が本来の意味。
書の部分が未だになっています。
つまり端正で美しい本源の書を成就する道未だ至らず
56:三徑就荒松菊猶存 二君に仕えることを潔しとしない陶淵明は隠遁すると、
荒れ果てた庭に青々とした松や菊が残っていた。
帰去来辞の一節。これをみて、不沈栄枯盛衰に
かかわらぬ誠を感じた。世が乱れても、
節操の高くあれの意味です。
こうして鉄舟は決断を得たことを刻しています。
57:浮雲(空を作字) 浮きに空を作字し、しかも家を示すウ冠の一部をカットして、
家を取られたことを意味させている。
江戸城がなくなったことを意味させている。
雲に隠された太陽、つまり慶喜に対し、
邪心が生じ、心迷うところある。
*無血開城したが、心空しさに迷うところあり。
誰にもわからないよう、作字されていると、推察。
67:一両潤居士 宗門に入りて穏やかに心豊かに潤されん。
72:天楽無彊 天の道に和合する楽しみは果てしない
74:即両端: 即は就く、両端をもって慶喜と明治天皇を指す。
端は本源を持って正しい誠での意味。
*本源の正しい誠をもって、両極の君に仕える。
端を2つの意味にかけ、
強調したい部分を大きくしている。
75:丘容光恵 孟子儘書には丘の門においてするは、
聖人の門に置いて和せざるところなり。
容光必ず照らす、道に本あり。
日月の隙においても照らさらざることなき。
丘の門とは空しさが必ず通る所、
知徳に優れ通りの明るいものが和せず
容光さすところどんなところでも、一筋の光さす。
鉄舟は心の本体を極めるに、これを決行のよりどころとした。
和こそが聖人の行う本質なり。
無血開城で和を得ることが道理と悟を印しています。
77:武帰必門甲壱 もっとも勝れたものになるには何としてもやり遂げる、
必ず通り抜ける重要な処、
それはひとたび武をもとからやり直すこと。
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